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京都大学大学院法学研究科・曽我部真裕(憲法・情報法)のページです。

バレント『言論の自由』書評①

 好評発売中のエリック・バレント言論の自由』(雄松堂)ですが、この度、本格書評専門紙・図書新聞2982号に上智大学・田島泰彦先生による書評が掲載されました。1面左肩と2面全部を使った長文記事です。

 記者のインタビューに答える形で、田島先生は、同書12章「メディアにおける言論の自由」(奇しくも当ブログ管理人が担当した部分でした)で取り上げられているプレスの自由の性格、内部的自由、取材源秘匿、放送の自由といった論点を日本の文脈とも対比させながら、原著者の立場を解説しておられます。田島先生には大学院の講義でも本書を使って頂いているようで、どうもありがとうございます。

 最後に、先生が原著者の基本的な立場を的確に要約された個所を引用させて頂きます。

「『言論の自由』を通して見えてくるのは、バレント言論の自由の捉え方です。最初に挙げた一つ目の考え方、すなわち国家からの自由は魅力的だし、アメリカの表現の自由の精神であって、それを支えているのが思想の自由市場の理屈ですね。けれども言論の自由は、『国家への自由』と言うとやや語弊がありますが、形式的で消極的な自由ではなく、もっと積極的な自由の位置づけをバレントはしている。別の表現で言えば、表現の自由とは国家の介入・規制という場面でだけ問題になるのではない。つまり、表現の自由が目指さなければいけない価値は何なのかということですね。」

「国家や権力が制約していなければいいのだ、というのではない自由のあり方を、どういうかたちで模索していくのか。そこに、バレントのようなヨーロッパ知識人の言論の自由の営為があるように感じます。根底には、商業主義や市場主義的なメディアのあり方に対する批判がある。もちろん、だからといって、何でもかんでも規制しましょうというわけではなく、現在までの表現の自由の伝統的な成果、獲得物をしっかり踏まえながら、このままでいいのかという問題提起をバレントはしているように見えます。」

 なお、今月末発売予定のジュリストにも本書の書評が掲載される予定です。